光塩女子学院中等科・高等科
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inter-edu’s eye
東京・杉並区の女子校、光塩女子学院中等科・高等科(以下、光塩)では、中等科3年間で「総合的な学習・探究の時間」を設けています。この探究学習に欠かせない施設が、光塩の「知の集積地」とも言えるラーニング・コモンズです。
この夏、ラーニング・コモンズは生徒たちの活躍によってより使いやすく改装されました。ラーニング・コモンズとは生徒にとってどのような場所なのか、そしてリニューアルにかけた思いとは?
01
前校長の蔵書本が寄贈された
ラーニング・コモンズ
ラーニング・コモンズは、長年同校にて小論文指導にあたってきた故・佐野摩美前校長が所有していた数千冊の蔵書寄贈を受け、2023年9月に開室されました。同室には「哲学」「AI・情報」「生命倫理」から「日本文化」「国際問題」など幅広いジャンルの書籍が揃っています。本の中には佐野校長が貼った付箋や線を引いた箇所が残っているものもあり、「佐野先生の本棚がそのまま移設されてきた」と言われるほどです。
開室から半年後の2024年1月には、ラーニング・コモンズをもっと生徒に広めようという目的で、生徒有志によるラーニング・コモンズチーム(以下、ラコモンチーム)が発足。中等科各学年のフロアに、同室の蔵書本からテーマに合わせてセレクトし、メンバーのアイデア満載のPOPと共に展示する「出張ラーニング・コモンズ」などの活動を行っています。
02
新たな本との出会いを
ラーニング・コモンズで
ラコモンチームで活躍する中学3年生のメンバーにお話をうかがいました。
同校の「共同担任制」について、一人ひとりを受け止めてくれるアットホームな雰囲気が自分に合っていると感じ入学。全国中学ビブリオバトルに出場することがきっかけで国語科の先生から誘われチームに参加。
建学の精神である「世の光、地の塩」のように一人ひとりの個性を大事にしてくれそうと感じ入学。中学1年生のときに、M.I.さんと弁論大会に出場したことがきっかけで、M.I.さんに誘われてチームに参加。
皆さんにとってラーニング・コモンズはどんな場所ですか。
M.I.さん
この部屋ができる前は小説を読むことのほうが多かったのですが、チームに参加し、ここに来るようになってから、哲学的な本にも触れる機会があり、新たな出会いをくれた、新しい考えを持たせてくれた場所になりとても愛着が湧いています。
C.T.さん
改装計画に参加して、私が理想にしていたことが初めて形になり、自分が作った空間だと思っています。例えば、廊下側をガラス張りにして、外からラーニング・コモンズの文字が見えるようにすることや、カーペットの配色など、私たちの意見を受け入れてくれました。
出会って良かった本はありますか。
M.I.さん
もともと法律に興味があったので、死刑制度に関する本や社会課題に関する本などはラーニング・コモンズだから出会えたのかもしれません。
C.T.さん
私も哲学的な本にはこれまで触れたことがなかったので、ここにある本を読んでみると意外と面白いなと思いました。
03
明るくカフェのような
イメージに!計画では意見対立も
今夏に実施された改装にはラコモンチームの意見も積極的に取り入れられたそうです。どんな思いがあったのでしょうか。
改装計画ではどんなことを重視しましたか。
M.I.さん
たくさんの人が来る空間にしたいという目標があったので、気軽に入って利用できることに重点を置きました。メンバーたちとはカフェみたいなイメージにしよう、身近な場所になるように明るい雰囲気にしようと話し合いました。
C.T.さん
みんなで納得するものを作り上げたかったのですが、意見がバラバラになったときは大変でした。最も意見が対立したのは可動式の本棚やドアのデザインでしたが、みんなが主張する色の中間色を選んでなんとか落ち着きました。
いろいろ乗り越えての改装だったのですね。無事完了しどんな思いですか。
M.I.さん
想像以上に生徒の意見を取り入れた場所になり感動しました。意見がまとまらないときもありましたが、最終的にはみんなが目指した理想に近いものができて、達成感がありました。
C.T.さん
思っていた以上に、森の中にいるようなリラックスした空間になったと思っています。友達ともよく利用していますが、この部屋だとリラックスして勉強できるし、家よりも集中できますね。
改装したラーニング・コモンズの一番のお気に入りは?
M.I.さん
個人的にはやはりガラス張りにした廊下側の壁。とても明るくなりましたし、以前と比べてすごく開放感があります。それにラーニング・コモンズは知っているけど足を踏み入れることがないという生徒が多かったのですが、外から見えるので、初めて入ってみたという声も聞きました。
C.T.さん
私はカーペット。ラーニング・コモンズは佐野先生のお名前が「まみ」ということからタヌキがキャラクターになっているんです(※)。そこでカーペットはタヌキの尻尾をイメージした色合いと模様にしました。とてもかわいらしくて大好きなんです。
※狸を「まみ」とも呼ぶことから由来。ラーニングコモンズの狸はしっぽが縞模様になっている
04 探究学習のヒントが見つかる
ラーニング・コモンズは探究学習を進める上でも活用されているそうですね。
M.I.さん
中学2年で行う探究チャレンジでは「戦争」をテーマに考えていましたが、広島や長崎に直接行く機会があり、この経験から「原爆」にテーマ変更しました。こうしたテーマを考えるにあたり参考にしました。
C.T.さん
探究チャレンジのときは、SDGsに関する資料を探すために利用しました。ラーニング・コモンズにはさまざまなジャンルの本があり、SDGs関連の本もあったので何冊か借りました。
中学3年生なのでポスターセッションの準備も進めていると思います。どんなテーマで研究されていますか。
M.I.さん
私は人工内耳をつけて生活していることもあり、障害者が求めていることは何か、というテーマを検討しています。一般的に障害者の対応を考えるとき、バリアフリー化などハード面のことが頭に浮かぶことが多いと思います。でも私は心のバリアフリーも必要だとずっと思っているので、一人でも多くの人に、私を通して伝わればいいなと思っています。
C.T.さん
私は常に寝不足なんです。なんで寝ても寝足りないのか、これを考えてみたいと思っています。調べてみると、睡眠はさまざまな社会問題とも関係していることが分かりました。ここには社会問題系の本もいろいろ置いてあるので、深掘りしていきたい。みんなが身近に思える問題とつなげて発表できたらと考えています。
05
人とのつながりができる場所に
したい!ラコモンチームの思い
これからのラコモンチームの活動について考えていることはありますか。
M.I.さん
本好きの人が集まって、自分の推し本を紹介したり、それがきっかけで新しく友達を増やせたり。そうやってつながりを広げられるような企画や、先生のおすすめ本の紹介、最近のニュースを基にしたアンケート企画など、興味を持ってもらえるテーマを考えて、気軽に来てもらえるようにしたいと思っています。
C.T.さん
出張ラーニングコモンズではPOPを作っておすすめ本を紹介していますが、逆に各学年の生徒みんなから、紹介してほしい本のアンケートをとり、その本にラコモンチームがPOPを作成して、フロアに展示するということをしたいと思っています。みんなの目を引いて、ラーニング・コモンズを活用してもらいたいです。
編集後記録
インタビューはリニューアルオープンしたばかりのラーニング・コモンズで行いました。とても明るく居心地の良いスペースで、まさにチームの理想が実現したのだと感じます。ここで本との新たな出会いがあったという二人。多くの生徒がラーニング・コモンズで新しい知識と出会い、探究を深めていってほしいと思いました。校内見学でもぜひ注目してみてください。
イベント情報
ミニ説明会(6年生対象)
2025年1月11日(土) 10:30〜11:30
終了後 校内見学・授業参観(〜12:00)
ミニ説明会(5年生以下対象)
2025年2月15日(土)10:30〜11:30
終了後 校内見学・授業参観(〜12:00)