2012年 東京大学 入試傾向分析インタビュー 東進ハイスクール
前年と比べて、今年の受験生の傾向はありますか?
東大の志願者数は13,215名(前年12,746名)と前年比103.7%と2年連続で増加し、今年度は大阪大学の志願者数を上回りました。前期日程では志願者数9,991名(前年比102.2%)、後期日程では3,224名(前年比108.7%)とともに増加しています。前期日程では、昨年度に大幅に志願者を増加した文科一類が今年度も人気の高さを維持して志願者数1,592名(前年比102.2%)。また同様に昨年度志願者数を伸ばした理科三類は、一昨年度の水準に戻り志願者数504名(前年比89.2%)となりました。
文科一類の増加とは逆に、文科二類1,078名(前年比90.3%)、文科三類1,439名(前年比97.4%)と減少しています。一方、理科一類は3,126名(前年比106.7%)、理科二類2,252%(前年比109.6%)と増加しており、昨今の理系人気を反映していると言えそうです。なお、後期日程が3,224名(前年比108.7%)と大幅に志願者が増加しています。これは、東工大の後期日程の大幅な縮小の影響があったものと考えられます。
ここ10年間の東大の問題を分析し、難化もしくは易化の傾向はありますでしょうか?
入試問題を教科別に見た限り、東京大学が求めるものが大きく変わったとは言えません。2012年には数学で行列が2題も出されるなど、今までにない傾向の変化がありましたが、出題の意図を推察するとどの教科も極めて洗練された問題が並んでいます。基礎力から応用力、さらに視野の広さや発想力を問われていることには変化はありません。
例えば現代文では、「センター試験で出題される漢字よりも易しいのではないか」と言われるような、東大受験者なら満点で当たり前の設問がある一方、英語では、超難問とは言わないものの、語彙の量的な対応や会話文、説明文など様々な種類の英語の文章理解を求める設問、文法知識も広域からの理解度を問う設問が多くなっています。『基礎力の上にしっかりとした学力の構築が絶対不可欠』と言える設問が継続的に出題されていて、いわば知力、体力、発想力などのバランスを求められていると言えるでしょう。
東大秋入学が実施されることについて、東大受験が今後どのように変化していくとお考えでしょうか。
秋入学と言っても、現在と同様に春に入試を行った上で、「秋の入学までの時間を個々に有効に過ごす」という議論が主流です。従って現状では入試そのものの難度や方法が大きく変化するとは言えません。ただ、外国の主要大学と同一の土俵で勝負するという意味では、決して有利に働くばかりではないでしょう。
それはなぜかと言うと、「外国の大学と時期が違うから流失していなかった人財」もいるはずだからです。秋入学の導入で世界の各大学と肩を並べる、いわば入試の自由化の中に飛び込むことになります。大学間の競争はますます激化するかもしれません。また、国内の一部の私立大学では、東大をはじめとした主要大学が秋に入学を移行するならば、従来通り春に入学を行い、前もって良い人財を刈り取り、そして囲い込むことも視野に入れているようです。
さらに秋入学にすることで、外国人の入学者がより多くなると予想されるため、「外国語で行う授業に対応できる学力と素養」は当然求められるものになってくるでしょう。東大生には、これまでより髙い語学力が求められることもありうるでしょう。
今年の合格状況について貴塾が考える分析などありましたら、お教えください。
一部の特定進学校に占める東大合格者の割合は依然高いものとなっています。ただし、前期試験のみを見ても、都立桜修館3名、海陽学園13名など新しい高校の増加と、埼玉県立浦和(28名→39名)、千葉県立千葉(18名→30名)、神奈川県立湘南(9名→19名)、愛知県立刈谷(9名→19名)といった伝統の公立高校の伸びも目立っています。
一方、一人ひとりの受験生を見ると、「低学年の時期から東大をはっきりと志望している」「東大合格のための準備を早期から直前まで周到に行っている」という2点が特徴として挙げられます。特に時間的な制約が多い現役生は、限られた時間の中でより効率的な学習をしてきた受験者が合格しています。また、センター試験で高得点を取れる学力が二次試験突破の前提であり、センター試験の得点と東大合格の相関も高くなっています。
最後に、来年の東大入試を控えた受験生、保護者の方へアドバイスなどありましたらお教えください。
東大入試の問題は確かに難しいものですが、まずは高等学校の授業や教科書など基礎と言われる事項を何よりしっかりと消化する必要があります。その上で演習量を増やしたり、実際に数百字での解答を書いてみたりすることが欠かせません。英数国を出来るだけ早く完成して、理科・地歴への対応の時間をできるだけ多く持つことが大切です。見事合格した先輩の学習方法などの体験談などを参考にしたり、模試を定期的に受けてそのデータをもとに学習進捗を確認したり、情報収集も積極的に行ってください。
また、配点からすれば二次試験の個別学力はセンター試験の4倍でありますが、まずは二段階選抜を通過するためにセンター試験は高得点が求められます。センター試験を侮らず準備をすることが肝要です。また、東大に受かること自体が目標ではその先がありません。自分の将来に関して、世界や日本で自分がどのように貢献していくかなどの夢や希望をしっかりと持って学習されることが大切です。