2012年 東京大学 入試傾向分析インタビュー 株式会社Z会
Z会に通われている生徒さんの受験学部の変更はありましたでしょうか?
今年はセンター試験の第一段階選抜ラインが(特に理系でかつてないほど)高かったのですが、実際、大きな失敗をした受験生は少なく、こちらが想定していたよりセンター試験後の出願変更の動きは少なかったです。
ここ数年の傾向では、センター試験後に、より合格点の低い学類に流れたり、受かりやすい学類・受かりやすい選択科目を選択する受験生が増えてきたりするなど、受験生(=学校や塾)が「情報を持っている」=「情報により動くケースが多い」印象です。例えば、昨年理3の合格点が異常に高かったことを受けて、センター試験であまり得点が取れなかった受験生が東京医科歯科大学に志望校変更するケースも多く見られました。
前年と比べて、今年の受験生の傾向はありますか?
前年と比べてというわけではありませんが、ここ数年「素直」な生徒が多い印象はあります。言われたとおりに講座を受講し、言われたとおりに行動し、次の指示がないとなかなか動けない…などのことがあります。また、不慮の事故に弱い面もあり、メンタル面でのバックアップが必要という生徒が年々多くなっています。大学に進学してからのことを考えると、高校生のうちから主体的に考えて積極的に動くことが望ましいと思います。
ここ10年間の東大の問題を分析し、難化もしくは易化の傾向はありますでしょうか?
「受験生が皆読解できなくて差がつかない」試験よりも、「大半の受験生が読解できるが、解答として表現する際の記述力で差がつく」ように調整していると考えています。これは他の科目でも同様の傾向が見られます。これは、合否をはかる試験として適当な出題となるよう、メリハリをつける意図なのだろうと推察しています。
ただし、それでも、ある程度力のある受験生でも、本番の雰囲気に呑まれて、計算ミスなどで失点するケースは毎年少なからずあります。
そのため、進路指導でも「きちんと得点できるところで失点しない」ことを強調しています。
これらの影響は今年の入試にどのような影響があったでしょうか。
文系:東大文系入試では、試験科目が1つ減るため、入試としては楽になるだろうという予想でしたが、これまで選択者が少なかった「地理B」(私立で課される大学が少ないため、1科目選択の昨年までは世界史か日本史を選択する受験生が多かった)で大きく失点した受験生が多く見られました。Z会東大マスターコース受講生の平均点では、8割を下回るという結果となりました。
なお、本件は、東大前期入試よりむしろ、併願のセンター利用入試および後期入試で影響がありました。第一解答科目の選択次第では、前期ではさほど悪くない得点率でも、後期出願をあきらめたケースが目立ちました。
文系に比べて理系の得点率が高かったこともあり、今年度は、東大文系志望者で後期出願をあきらめたケースも多く見られています。
理系:「倫理、政治・経済」を、昨年までの公民と同じ感覚で甘く見て、対策が遅れがちになるケースが多かったように思います。実際、「地理B」と並んで、「倫理、政治・経済」も同じぐらい低い平均点でした(いずれもZ会東大マスターコース受講生の平均点では80点を下回っております)。
今年の理系は、センター試験で最も得点を落としやすい「国語」が取り組みやすかったこともあり、入試を決めるほどの影響はありませんでしたが、若干差をつけられてしまったケースも見られました。
最後に、来年の東大入試を控えた受験生、保護者の方へアドバイスがありましたらお教えください。
入試で必要な科目について、バランスよく学習し、力をしっかりつけることが前提条件となりますので、情報を得て安心するのではなく、情報を活用して力を伸ばしていってください。
例えば、必須な模試を適度に受験し、できていない分野をしっかり認識し、次の模試までに潰していく…など対策してください。
その一方で、コンサルティングで20点伸びることは有利に働くわけですから、氾濫している東大入試情報をどう取捨選択するか、個々の状況に応じてどう戦略を立てていくべきかについては、ぜひZ会にご相談ください。